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父の車を傷つけて、、

* これは前回の記事のつづきです。

狭い道で前から来た車をよけようとして何かに車をぶつけてしまった私。

どうやってこの事を両親に報告しようかと、家までの運転中そのことばかりを考えていた。

家に着いて車を停めた私は、降りてからまたさっきのへこみと傷を確認した。

そして深いため息をついた。

「ただいまー。」

そう言って家に入ってから、

「お父さん、お母さん、ごめんなさい!」

とちょっと大袈裟なくらいに頭を下げた。

「どうしたの?」

母はそう聞きながら、これから私が何を言おうとしているのかを察しているような感じだった。

「車ぶつけちゃった。」

「えっー!」

母が驚いた声をだした。

「だって雨が降ってたし、道は狭いし、それなのに前からすごいスピードで車が走ってきたから絶対にぶつかると思ってハンドルを左に切っちゃったんだよ。そしたら何かにゴンってぶつかって。でも草がいっぱい生えててそんなもの見えなかったし。」

私はまるで小さい子供のように早口で言い訳をした。

そして

「とにかく外に出て傷をみてくれる?」

そう言って両親を外に連れ出した。

外に出て車のへこみと傷を見た父は、

「ありゃー、こりゃー派手にやったなー」と一言いった。

「ごめんね お父さん。これじゃ修理に出さなきゃダメだよね。」

「いいよ、いいよ、お父さんがホンダの飯島さんのところに持って行ってみるから。」

「今から行ける?」

「これは板金だから結構かかっちゃうかもね。」

母が横からつぶやいた。

「大丈夫だ、きっと保険でやってくれるから心配すんな。」

「ごめんね。」

私は本当に申し訳なくて、父の顔をまともに見れなかった。

あんまりしょんぼりしている私に 父は、

「きっと一度か二度はぶつけるだろうと思ってたよ。物なんて何でも壊れるようにできてるんだから、心配すんな。」

と、まるで悟りを開いた禅僧のようなセリフを吐いた。

私にはその時の父が神様に見えた。


                   ◇

この後のエピソードにも度々登場する父は、私たちの滞在中本当にすばらしい存在だった。

風太が中耳炎を起こして夜中に父を叩き起こした時も、嫌な顔ひとつせずすぐに起きて救急病院まで連れていってくれたし、次の日に耳鼻科を訪ねた時もずっと私たちと一緒にいてくれた。

私が仕事で東京に行き帰りが遅くなった時も、いつもは8時ごろ寝てしまう父がお酒も飲まず私の帰りを待っていてくれた。
そして私が駅から電話すると 「あいよ」と言って、10時ごろ車で駅まで迎えに来てくれた。

ノッコと風太がどんなに騒いでも、どんなにわがままを言っても、どんなに迷惑をかけても絶対に怒ったり批判したりしなかった父。

慣れない環境でストレスを溜めていた私に、そんな父の存在がどれくらい心の支えになったことか。

けれどそんな父は、昔からこんなに人間ができていた訳ではなかった。

私たちが小さい頃は、所謂「酒乱&DV男」で、お酒を飲むたびに母に暴力を振るっていた。

大きな怒鳴り声をあげては母を叩いたり、髪をひっぱったりしていた。

一度はあまりに母の悲鳴が凄まじいので、近所の人が父を止めにきたほどだった。

私はいつも叩かれている母が可哀想で仕方がなかった。

だから自分はいい子になって、母を喜ばせようと一生懸命だった。

父は競馬にもはまっていたし、浮気も何度かしたことがあった。

だから私は物心ついた頃から、毎日母の愚痴を聞きながら育った。

自分が今大人になって振り返ってみても、やっぱり父は最低な夫だったと思う。

けれど不思議なことに私も姉達も父が嫌いではなかった。

いつもガミガミうるさい母に比べて、父はおおらかで私たちにとてもやさしかった。

私の友達が遊びに来ると、くだらない冗談を言ってはみんなを笑わせていた父。

「さわちゃんのお父さんて おもしろーい」と笑う友達を見て、そんな父がちょっと自慢だったりした。

けれど私達が成長するにつれて、年頃の娘達とどう接したらいいのか分からなくなってしまった父は、私たちと話すことがだんだんなくなっていった。

そして次第に私たちの距離は広がっていき、家庭の中で父はいてもいなくてもどちらでもいいような存在になっていった。

そんな父と私の関係が変わり始めたのは、私が子供達を連れて帰国するようになってからだった。

4年前の帰国の時は、認知症気味の叔母がノッコの批判をするたびに「だまってろ!」と叱りつけてくれたり、癇癪を起こして暴れるノッコに「環境が変わったから不安で仕方がないんだろ」と理解を示してくれたのも父だけだった。

今回の帰国でも、嫌な顔をせずどこにでも車で連れて行ってくれたり、子供達と一緒に公園に遊びに行ってくれたり、私がスーパーで買い物をしている間に子供達を見ていてくれたり、父はとってもやさしかった。

だから子供達もおじいちゃんが大好きで、いつもべったり甘えて離れなかったほど。

父と多くの時間を過ごして話をしているうちに、今まで知らなかった父の意外な面を知ったりもした。

父は若いころ歌がとても上手で、プロにならないかとスカウトされたことがあったとか。野球が得意だったとか。

私は、私や子供達を理解し深い愛情を注いでくれる父が好きになっていった。

それと同時にちょっと困ったような気持ちも抱えていた。

どう説明したらいいのか分からないけれど、私の中に父をあまり好きになりたくないような矛盾した気持ちも存在していたのだった。

確かに父の私に対する愛情のようなものは常に感じていた。

でも小さいころに見た暴力を振るう父のイメージはしっかり私の中に焼き付いていたし、母を苦しめた父を今でも許すことはできなかった。

それに何十年も私に関わってこようとしなった父は、いつも何を考えているのかがよく分からなかった。

だから父にとって私の生活なんてどうでもいいことなのだろうと思っていたし、私も父に対して特別な感情を持ち合わせることはなかった。

そしてアメリカに移住してしまった今、父をそんな存在にしておくことは私にとってある意味楽なことでもあった。

離れていても全然さびしくなかったし、父に何かを期待する必要も全くなかった。

とにかく元気で生活してくれていればそれでいいと思っていた。

それが今回の帰国で、私の持っていた父のイメージが大きく変わってしまった。

常に私たちの失敗や間違いを許し、私の気持ちを察してやさしい言葉をかけてくれる父。

小さい頃から私の中にあった父への怒りは行き場を失い、今の感謝の気持ちとごっちゃになって、私は父に対してどういう感情を持ったらいいのか分からなくなってしまった。

                       ◇

ホンダの飯島さんのところに傷ついたクルマを持って行った父が、しばらくして帰ってきた。

「大丈夫だ。保険で全部やってくれるっていうから。」

「ああ、よかったぁ」

母がホッと胸をなでおろして言った。

「お父さんがぶつけたことにしておいたから、さわこは飯島さんと話さなくていい。」

「えっ?」

私は驚いてしまった。

だって父は初めて免許証を取ってからこの60年近く一度も事故や違反を起こしたことがなく、それを地元の警察に表彰されたことをいつも自慢にしていたから。

自分は運転が上手だといつも自負していた父は、中古車を購入した際ホンダの飯島さんに高齢のことを言われた時も、「大丈夫」と言い切っていたそうだ。

そんな父がプライドを捨てて、事故を自分のせいにしてくれるとは思いもよらなかった。

「お父さん、今までずっと無事故で来たのに、、」

「いいんだよ、そんなことは。」

そう言って笑った父に、

昔の怖かった面影は少しもみつからなかった。



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No title

いいお父様ですね。愛情の深さをさわこさんの文章からも感じます。どうぞ離れていても、大事になさってください。

Re: No title


まりんさん、

コメントありがとうございます。
そうですね、父は基本的にとてもやさしい人なんだと思います。
でもお酒を飲んでいない時も、母とだけはけんかが絶えないのできっと相性が合わないのだろうなと思います。
私や子供達に与えてくれるやさしさの半分だけでも母に与えてくれたらいいのになと思います。

今でも日本滞在時の父の様子を思い出すと心が温かくなります。
まりんさんのおっしゃる通り、離れていても両親を大切にしなくてはいけませんね。
今日あたりまた電話してみようと思います。

いつも拝見させて頂いています。
今回コメントは初めてです。

この記事を読んだ後の本日、私も車を擦りました。
かなりショックですが、自分の車でなければ尚ショックでしょうね。
車の運転苦手なのに車がないとダメな田舎なのが辛い…。

うちのもうすぐ4歳の息子がノッコちゃんとよく似ていて、とても共感しながら読んでいます。
昨日日曜は特に癇癪が酷くて参りました。
外食に行った先でグズグズし始めて大きな声を出すものだから叱りつけてみたり宥めてみたり…。
隣に座っていた男の子が同じくらいなのにちゃんと座って静かに食べていたので恥ずかしくて仕方なかったです。
どうやら幼稚園では問題なく過ごしているようで土日に癇癪を起こすので土日が憂鬱…。

関係なく自分の話を出してすみません。
私も凹んでいたので、つい書き込んでしまいました。

これからも応援しています。

Re: タイトルなし


あゆさん、

初めてのコメントありがとうございます!

そうですかぁ、、、あゆさんも車を傷つけてしまったんですね。
ショックですよね。
もう自分を「バカバカバカ!」と殴りたくなりますよね。

私の実家も車がないと生活ができないような田舎だったので、とても辛かったです。
せめて自転車に乗れればよかったのですが、自転車は全部処分してしまったというし。
あゆさんの車も保険で直してもらえるといいですね。

あゆさんの息子さんもノッコと似ているとのことで、土日が憂鬱になってしまうお気持ちがよく分かります。
普段学校でいい子にしているので、週末その鬱憤が家で出てしまうのでしょうね。

>隣に座っていた男の子が同じくらいなのにちゃんと座って静かに食べていたので恥ずかしくて仕方なかったです。

この気持ちはすごく分かります。
なんとなく周りの子供が、全員自分の子より育てやすい子のような気がして落ち込んでしまうんですよね。

実は最近ノッコもすごく荒れていて大変なんです。
あまりに辛いので、いっそ薬に頼ってしまおうかとジョンと話したりしています。
そのことも書いていこうと思いますので、お時間のある時にまたご訪問ください。

子育ては辛い日もありますが、楽しい日もありますね。
ついつい落ち込んでしまう日は、ピクニックなどの楽しい写真を見て「こんな笑顔の時もあったんだー」と気持ちの切り替えをしています。

お互いこれからもがんばりましょうね。


No title

こんにちは!
最初からブログを小説を読み進めるように読ませていただきました。
涙あり、笑いあり、もう私はさわこさんのお友達、いや親戚の気分です。笑

お父様、昔の事を後悔されているのかもしませんね。
せめてもの罪滅ぼしとして、孫と娘を大切にしたいと思っているのかもしれないと感じました。昭和の男性なので、お母様には素直に謝れず、歩み寄りもなかなか難しいのかもしれませんが、心の中では懺悔されているんじゃないでしょうか。
さわこさんの過去は想像できませんが、お父様の現在を本当のお父様の姿として受け入れてあげて欲しいと、勝手ながら思いました。
(何もしれないのに、偉そうにすみませんね)

Re: No title


こころさん、

コメントありがとうございます!
そしてこんな整理のできていないブログを古いものから読んでくださってすごくうれしいです。
もう我が家のことなら何でもお分かりですね? そうなると逆に、近くにいる友人や親戚より私たちのことを知っているかもしれませんよ。

失礼ですがこころさんは私と同じくらいの年齢でしょうか? 
私たちの父親の世代をよく理解していらっしゃる感じがします。とても鋭いですね。

こころさんのおっしゃるように、父はきっと私たちが若い頃に私たちと接することがほどんどなくなってしまったことを後悔しているのだと思います。
歳をとって性格も丸くなった今、以前よりも素直にその埋め合わせをしたいという気持ちを表現できるようになったみたいです。

ただ母とは本当に性格が合わないらしく、歩み寄る姿勢は全然見れませんでした。
母の前ではどうしても素直になれないようです。
ただそれでも情はまだあるようで。一度母が「お風呂に入ってくる」と言ったきり一時間以上も出てこないことがあったのですが、その時父が「お母さんが倒れてるかもしれないから、悪いけどさわこ見てきてくれ。」と私に頼んだんです。

その時、なんだかちょっとうれしい気持ちになったのを覚えています。

私と父の関係は以前よりずっといいものになってきているし、今の父は素直に好きだなと思えます。
こうやって小さい頃に受けた心の傷は、少しずつ癒えていくのかもしれませんね。

励ましのお言葉を本当にありがとうございました!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: No title


鍵コメ「ち」さん、

コメントありがとうございます。

そうそう、本当に久しぶりに両親と会うと「年取ったなー」と思いますよね。
しかも鍵コメさんは十年ぶりだったなら、尚更ですね。
本当に久しぶりにご両親に会えてよかったですね。
ご両親もきっとすごく嬉しかっただろうと思います。

鍵コメさんのところはハリケーンの影響が出ているんですね。
ネットでその映像などを見ると心が痛みます。

大変だと思いますが、一日も早く普段の生活に戻れるようお祈りしています。
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さわこ

Author:さわこ
在米のさわこです。売春、ドラッグ、破談などの障害を越えてようやく家へきたノッコと風太の養子縁組のお話を綴っていきます。

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