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精神科医の先生への質問

* これは前回の記事のつづきで、半年前のお話です。


精神科医の先生に「お母さんのほうから何か質問はありますか?」と訊かれたので、私は以前から気になっていたことをいくつか先生に訊いてみることにした。

「先生は、私がノッコに日本語の勉強をさせることについてどう思われますか?」

ちょっと思いがけない質問だったようで、彼はちょっと驚いた顔をした。

「この間のレポートにも書きましたが、私は家でノッコに日本語で話しかけるようにしているし、毎週土曜日には日本語学校にも通わせています。日本語の読み書きもできるようにさせているので、その勉強にかなりの時間を費やしています。現地校の勉強にさえついていけないノッコに、日本語の勉強まで強いるのはかわいそうなのではないかと時々思うのです。なのでこのさい思い切って日本語の勉強は一旦やめて、英語の読み書きに集中させた方がいいのではないかと思うのですが、先生はどう思われますか?」

私がそう訊くと、先生はしばらく考えてから、

「どうしてお母さんは、ノッコちゃんに日本語の勉強をさせたいのですか?」と訊いた。

「それは、、、もちろん日本にいる私の家族と話せるようになって欲しいとか、将来就職する時にバイリンガルであることが有利に働いて欲しいという希望もあります。でも、、それ以外にも、ノッコに自信をつけて欲しいからという理由もあるんです。学校の勉強が遅れているうえに、習い事でもお友達にどんどん抜かされてしまうノッコは、ちょっと自分に自信がないようなところがあるのです。だから何か他の子にはできない能力をノッコに身につけて欲しいという思いから日本語をやらせています。彼女がどんなに落ち込んだときでも“自分にはこれがある”とちょっと自慢に思えるような能力を与えてあげたかったんです。実際彼女が ”自分は何も上手にできない” としょげている時に、”日本語ができる子はそんなに多くないよ”とか”日本語ができるなんてすごいと思うよ”と言うと、ちょっと気持ちが楽になるようです。」

「そうですか。」

そう言って彼は何度もうなづいた。

「それならいいのではないでしょうか。来年もう一度一年生をやり直すのであれば、時間的に今より余裕が生まれるかもしれませんし。来年の様子を見ながら続けるかどうかを決めていけばいいと思いますよ。バランスさえ保っていれば続けられるのではないですか?」

「そう言っていただけるとうれしいです。やはり私のエゴで日本語をやらせているという部分もありますので。」

「自分の母国語を子供に教えたいと思うことはごく自然なことだと思いますよ。」

「ところで先生は、今度の検査の結果から見てやはりノッコは来年も一年生をやるべきだとお思いですか?」

「そうですね、例えデータの上でノッコちゃんが平均の範囲に入ると言っても、クラスからかなり遅れているのは事実ですからね。もう一度一年生の基礎をやらせることは、今後の勉強に役立つことだと思いますよ。それに3年生になると学生は全員、全国規模の読み書きのテストを受けなければいけないんですよ。そしてその時3年生のスタンダードに達していないと見られた学生は強制的に3年生をもう一度やり直させられるんです。3年生になるとさすがにそれを恥ずかしく思う生徒も出てきますので、それを考えたら今一年生を繰り返させたほうがノッコちゃんのためになると思います。」

「そうですか、、、3年生で。 じゃあ、そうですね、、今繰り返したほうがいいですね。」

「一年生は、いい意味でも悪い意味でも、まだ学校の仕組みがよく分かっていませんからね。」

「そうですね。 、、、、それからもう一つ訊きたかったんですが。」

「何ですか?」

「これからノッコは2年生の年齢で1年生をもう一度やり直す訳ですが、今後の私たちの対策としては、2年生のお友達に追いつくように2年生の教材も少しずつ教えていった方がいいのでしょうか。それとも全くの一年生として去年やった教材だけをやらせていればいいんでしょうか。」

「お母さん、ノッコちゃんは2年生であるべきだったという考えはすっかり捨てて、全くの一年生として扱ってあげたほうがいいと思いますよ。」

「ええ。でも、、、どうしても本来は2年生のはずなのにという思いが頭から離れなくて。」

「その気持ちはよく分かります。でも今度ノッコちゃんが一年生を繰り返す時にお母さんとお父さんが全力ですべきことは、ノッコちゃんに勉強の楽しさを教え直してあげることです。去年よりやさしくなった授業や宿題を通じて、ノッコちゃんに学ぶこと、分かることはこんなに楽しいことだったんだと実感させてあげてください。それによって彼女が身につける自信は一生の宝物になるでしょう。ですからそこで2年生の教材を持ち出してきて、“本来はこれくらいできるはず”とやるのは、けして得策だとは思えません。今のノッコちゃんなら次に入ってくる生徒達よりきっと優位な立場になっていることでしょうから、どうかそれをノッコちゃんと一緒に楽しんであげてください。
どうしたらノッコちゃんが一年生としてこの一年を楽しく過ごせるのか。それをいつも頭におきながら過ごしてあげてください。」

私はこの言葉を聞いた時、(今日この先生と話せて本当によかった)と心から思った。

この人は学校のためとか、自分の立場のためとか、そんなことを気にしながらこの仕事をしている人ではないのだと思った。

自分が担当した生徒にとって、どうすることが一番いいのか。

彼が重点を置いているのは本当にそこだけなんだ。


(ノッコは幸せ者だなぁ。)

私はその時そう思わずにいられなかった。

こんなに制度が行き届いた学校に通い、カーター先生のようなすばらしい担任をもち、ティムのように親身な精神科医に検査してもらえるなんて。

その時、以前友人のトッドが言っていた「こんなすばらしい環境の中で勉強ができるのだから、きっとノッコちゃんは大丈夫だよ」という言葉を思い出した。

(本当にトッドの言う通りだ。)

そのあと私は何の迷いもなく ”一年生留年の申込書” にサインをし、何度もティムにお礼を言って彼のオフィスをあとにした。

なんだかほんわりと温かいような、清々しいような、不思議な気持ちで胸がいっぱいだった。


つづく

*次は、ノッコにこのニュースを伝えた時のおはなしです。


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さわこ

Author:さわこ
在米のさわこです。売春、ドラッグ、破談などの障害を越えてようやく家へきたノッコと風太の養子縁組のお話を綴っていきます。

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