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精神科医の先生からの報告

* これは前回の記事のつづきで、半年前のお話です。


ノッコの勉強の遅れは学習障害ではないだろうという検査結果を精神科医の先生から聞いた後、彼はどうしてノッコが伸びると思うのかという理由について話してくれた。

「まずノッコちゃんは、とても素直な性格をしていますよね。これは担任のカーター先生や補習クラスの先生達も言っていました。私が授業の様子を見ていた時も、先生から間違えを指摘されたノッコちゃんは、すぐに“ああ、そうだ”と言って答えを直していたし、先生に“ここまでがんばろうね”と言われたら、その通りがんばっていました。そういう素直さは、学習をしていくうえで結構大切なことなんですよ。」

それを聞いて私が最初に思ったのは、

(えっ! うちにいる時と全然違う!)だつた。

私やジョンが勉強をみてあげる時は、私たちが間違いを指摘しても「これでいいの!」とか「最初から知ってた!」とか、ノッコは絶対に自分の間違いを認めようとしなかった。だから私は「ノッコちゃん、勉強が分かるようになるには、まず自分が間違ったことを認めて、そのあと人の説明をしっかり聞くことが大切なんだよ。」と何度も、何度も、何度も言って聞かせたのだった。

そんなノッコが学校では、ちゃんと間違いを認めているなんて。

全世界に反抗するためだけに生まれてきたようなノッコが「素直だ」なんて、ちょっとそのギャップに驚いてしまった。

「そして二つ目は、ノッコちゃんがとてもがんばり屋さんだということです。私がノッコちゃんの補習クラスを見に行った時、与えられた課題を時間内に終わらせられなかったノッコちゃんは、休み時間に入ってもそれを終わらせようとしていたんです。別に途中でやめてもよかったのに、なにがなんでも終わらせるんだという感じでした。そういう姿勢はとてもいいですね。」

「ありがとうございます。」

確かにノッコががんばり屋なことは私も知っていたし、もしもすぐに投げ出す性格の子供だったら、今のレベルにさえ到達していなかったかもしれないなと思う。

だからノッコのそういう面は私もとても評価していた。

「そして最後に、ノッコちゃんは“学びたい”という気持ちをとても強く持っていますね。もっと正確に言うと、“周りのみんなのようにできるようになりたい”という思いがとても強いんです。」

「そうなんですか?」

「はい。授業中に先生が生徒に質問をすると、他の子と混ざってノッコちゃんも必ず手をあげるんです。でも指されるとその答えはいつも間違ってる。普通だったらそこで恥ずかしくなって手を挙げるのをやめてしまうものですが、でもノッコちゃんはけして手を挙げることをやめないんです。みんなの前で正しい答えを言いたいという願望が強いのでしょうね。そのため最後には隣の子の答えを見て答えてしまったのですが、そういう“みんなと同じようになりたい”“先生に褒められたい”という気持ちは、勉強をがんばるうえでとても大切な要素なんですよ。」

「そうだったんですか。」

精神科医の先生が教えてくれた、この最後の点は私にはとても意外だった。

ノッコはもともと競争心があまり強い方ではなく、「〇〇ちゃんよりできなくて悔しいからもっとがんばる」というような態度を見せたことがあまりなかった。普段の様子を見ている限りでは、周りにどう思われようがあまり気にしないタイプで、いつもマイペースで物事を進めることが多かった。

それにノッコは、言われたことはきちんとやろうとするがんばり屋だけれど、自分から積極的に何かに取り組んだり努力したりするタイプではけしてなかった。

だから勉強もできてもできなくても別にどちらでもよく、「ママに言われたから嫌々やっている」というだけでノッコ自身がもっとできるようになりたいと望んでいるとはあまり思っていなかった。

でも確かに以前日本語学校の授業参観に行ったときも、ノッコは間違えた答えばかり言っていたのに、それでも手を挙げるのをやめなかったなということを、その時ふと思い出した。

「ノッコちゃんの場合、がんばり屋で勉強ができるようになりたいという気持ちが強い訳ですから、その気持ちを削がないように根気強くがんばっていけば、きっと今後伸びていくと思いますよ。」

「そうですか。そう言っていただけると心強いです。」

「私の方からの報告はこれで終わりですが、お母さんの方から何か質問がありますか?」


そう先生に聞かれて、私は以前から気になっていた二つのことについて訊いてみることにした。


すみません、もう少し続きます。


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学習障害の検査の結果

これは前回の記事のつづきで、半年前のお話です。


ノッコの学習障害の検査の結果が出たというので、早速私は精神科医の先生とアポイントメントを取り会いに行ってきた。

ジョンもよっぽど行きたがっていたけれど、例年のごとく長期の海外出張が入ってしまったので私一人で行ってきた。

その精神科医の先生のオフィスに入ると、彼は初めて会った時のようにニコニコして椅子に座っていた。

前回会った時は、彼の説明がなんだかマニュアル化されているような、ひどく事務的な感じがしたのだけれど、今日の彼はもっとくだけているような気がした。

自分が日本に行った時の話をしたり、自分の子供は日本のキャラクターが好きだというような雑談を5分ぐらいした。

こんなに穏やかな話し方をする人をみたことがないというくらい彼の声はやさしく、話し方も表情もとても落ち着いていた。

(この人の奥さんも子供達もきっと幸せなんだろうな)

私はそんなことをぼんやりと考えながら彼の話を聞いていた。

「それで本題なんですが。」

心なしか先生の口調が少し硬くなったような気がした。自分の専門分野の説明だからちょっと改まったのかな。

先生は「これを見てください」と言って、何ページにも及ぶ検査結果の資料を私に見せた。

そして各検査項目のやり方や目的を丁寧に説明をしたあと、

「検査の結果ノッコちゃんには、学習障害はないだろうと思われます。」と言った。

「少なくともディスレクシアではないとはっきり言うことができます。」

ということだった。

読み書きでも、算数の能力でも、ノッコはクラスではかなり遅れているけれど、全国レベルでみるとそんなに酷く遅れている訳ではないそうだ。

数字的には、全部で10項目近くあるうちの9項目は「平均」か「平均よりやや低い」だった。

特に6月生まれでまだ6歳だということを考えれば、他の子より多少遅れていても仕方がないのではないか、と先生は言っていた。

私はノッコに学習障害がないと聞いてホッとした反面、同時にこの結果をどう受け止めたらいいのか正直分からずにいた。

「でもノッコの学習の様子を見ていると、彼女の脳の働きは他の子とちょっと違っているように思うのですが。」

「私はノッコちゃんの脳を医学的に調べた訳ではないので、彼女の脳の働きを科学的に説明することはできませんが、でも人の脳の働きはそれぞれ皆違うということを覚えていてください。特に子供の脳の発達はその子によって大きく違ってくるものなのです。3歳児に哲学の話をしても理解できないように、ある概念を理解するためには、それなりの知識の積み重ねと経験が必要なんです。ノッコちゃんの場合、障害のためにその概念を理解できないというよりは、まだ精神年齢が低いために、そういう知識を受け入れる器がまだできていないという状態でしょうか。」

「じゃあ、ノッコの精神年齢が上がれば、それとともに学習能力も上がってくるのでしょうか?」

「そう断言はできませんが、その可能性は高いです。精神年齢が上がれば、集中力や分析力が上がってきます。それによって飛躍的に学習能力が伸びるお子さんはたくさんいます。」

「私が今心配しているのは、例え来年ノッコに一年生を繰り返させても、今度2年生に上がった時、3年生に上がった時に常に勉強についていけなくなってしまうことなんです。今度一年生をもう一度やらせることで、ノッコは2年生のレベルに達することができるのでしょうか?」

「それは私には分かりません。でも今はあまり1年生とか2年生とか、そういう枠に縛られて考えない方がいいかもしれませんね。それに私にはノッコちゃんならきっと伸びるだろうと思える要素がいくつかあるんですよ。」

そう言って先生は、彼が今回の検査の過程で気付いたことについていくつか話してくれた。

つづく


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夫婦間での違い(子供の学習)

これは前回の記事のつづきで、半年前のお話です。


トッドとアンとジェーンの経験から色々なことを学ばせてもらった私とジョン。

そんな二人の話を「うん、うん」と聞いているうちに、私はあることに気がついた。

それはトッドとアンの、学習に対する考え方の違いだった。

トッドは大学教授をしていて、アンは精神科医をしている。

二人とも社会的に立派な職業に就いているのだけれど、そこに辿り着くまでの道のりはかなり違ったものだったらしい。

小さい頃から優等生だったアンは、なんでも上手にこなす子供だったという。今でも性格が穏やかでとても控えめな女性だ。

それに比べてトッドはおしゃべりで落ち着きがなく、小さい頃もディスレクシアとADHDの影響で勉強にとても苦労したらしい。そんなトッドが障害を克服して教授になるためには、並々ならない努力をしてきたのだろうと思う。

アンは自分が努力をしなくても勉強のできる子供だったので、ジェーン達がどうして勉強ができないのかがよく分からないらしく、つい二人を見ているとイライラしてしまうと言っていた。そして最初は自分の子供が同じ学年を繰り返すなんて信じられないとかなり落ち込んだそうだ。

その逆に自分自身が小さい頃勉強で苦労したトッドは、娘のジェーンや息子のジュリアンの勉強の遅れにとても寛大で、彼らの苦しみもよく理解しているようだった。

それに、そんな自分でも大学教授になれたという自負があるので、彼は常に子供達の将来に対して楽観的だった。

「大丈夫だよ、さわこ。こんなに子供のためにがんばっている親と先生がいるんだから、きっと彼らも何かで花を咲かせてくれるよ。」と会話の中で彼は何度も言っていた。

そんな彼の前向きな姿勢が、アンの「自分の子供が留年なんて、、」と落ち込む心を楽にし、彼女が子供達にかけてしまいがちなプレッシャーにブレーキをかけているような気がした。

私もアンと同じように、小さい頃はどちらかというと優等生だったので、どうしてノッコが1+1=2を理解できないのかが分からず、すぐに怒鳴りつけたり机を叩いたりしてしまうのだった。

そしてその度にノッコは大泣きをし、益々勉強が嫌いになってしまうという悪循環だった。

私のその態度は仕事先でも同じで、飲み込みの悪い同僚や部下を見ていると「どうしてこんな簡単なことが分からないんだろう」とすぐにイライラしてしまうのだった。

その度にどうして自分はもっと他人に対して寛大になれないのだろうと落ち込むのだった。

だけどトッドを見ていて、ノッコのこの経験もいつか彼女が大人になったとき、勉強ができない子供を理解できる親になるための大切な役割を持っているのかもしれないなと思えた。

そしてノッコのような子供を持ったことで、私自身も変わってきていることを感じていた。

                                ◇

トッド達の話を聞いてノッコに1年生をもう一度やり直させることに決めた私達だったけれど、じゃあ実際それをノッコにどう話そうかとなるとやはり戸惑うところがあった。

ノッコを椅子に座らせて突然、「実はね」なんて話し出すのも不自然だったし、養子縁組の告知の時のように養子に関する絵本を読んであげる訳にもいかなかった。

もうすぐ今学期の通信簿をもらってくるので、その時に話すことも考えてみたけれど、それじゃいかにも「ほら、あなたは成績が悪いから上に上がれないのよ。」と言っているみたいで、ちょっと残酷な気がした。

なのでノッコが新学期の話を持ち出した時にさりげなく「もしかしたら2年生に上がらないかもしれない」ということを伝えていくことにした。

けれどその頃のノッコも、ノッコのクラスメートもみんな夏休みの計画を楽しみにしていて、新学期の話題がのぼることはあまりなかった。

そうしてノッコに伝えるタイミングを見計らっているうちに、精神科医の先生から「検査の結果が出ました」というメールが届いた。


つづく


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友達の経験談を聞いてみて

* これは前回の続きで、半年前のお話です。


友人のトッドとアンをランチに招待して、彼らの娘のジェーンが2年生を繰り返した時の様子について話してもらった。

彼らは本人にどう話すのがいいのか、たくさんの参考になる話を聞かせてくれた。

そこで私は次に、気になる友人関係についても訊いてみた。

「ジェーンが2年生に残ったことでそれまで仲よかったお友達との関係はどうなったの? 教室は違ってても休み時間とは校庭で会うでしょ? どうしてジェーンはまだ2年生なのとか、からかわれなかった?」

「それもね全く問題なかったのよ。ジェーンには2年生の時、仲がよかったお友達が何人かいたけれど、そんなに強く繋がっていた子もいなかったから、それも手伝ったのかもしれないわね。彼女が1年生から2年生に上がった時も、新しいクラスのお友達とばかり遊んで1年生の時の友達とはそんなに遊ばなくなっちゃったし。2年生を繰り返した時もそんな感じで、下から上がってきたクラスメートとばかり遊んで3年生に上がったお友達とはあまり遊ばなくなったのよ。あの年齢の友人関係なんてそんなものじゃないかしら。学年が変わったり、クラスが変わったりすると、自然と前のお友達とは遊ばなくなるっていうか。」

確かにそう言われれば、私も小学校の頃はクラス替えがある度に前のクラスの子とはあまり遊ばなくなってしまった。

「そう言えば一度だけ何かの行事で全校生徒が集まった時に、3年生に上がった男の子がジェーンに“どうしてジェーンは2年生のクラスにいるの?”って聞いてきたことがあるらしいよ。でもそれも別にからかってるというより純粋にどうしてだろうと思って聞いてきたらしく、ジェーンも特に気にしてなかった。」

「そう。」

「それにね、以前住んでた家の近所にちょうどジュリアンと同い年の男の子がいてね、家族ぐるみでずっと仲良くしてたの。その男の子がやはり一年生をもう一度やり直してジュリアンより学年が一つ下になっちゃったんだけど、今でもジュリアンとその子は一番の親友よ。学年の違いなんて全く気にしてないみたい。」

「僕は思うにあの年齢の子供たちにとっては、学年がどうとか、そういうのはあまり関係ないみたいだね。逆に気にしてるのは親たちの方で。」

「じゃあジェーンが2年生に残ったことで、トッドとアンのママ友やパパ友との関係はどうなったの?」

「うーん、私たちには特に仲がよかったママ友とかいなかったし、別に親しくない親御さんたちにわざわざ言うことでもなかったから、ジェーンが2年生に残ることはそんなに多くの人には言わなかったのよ。それを言ったからといって別に態度を変えるような友人もいなかったし、彼らにとっては友達の子供が留年したからってそんなことどうでもいいことだったんじゃないかしら。」

「そうかもね。」

実際私にとってもジェーンが留年したからといって、彼女に対する見方が変わったなんてことは少しもなかった。


「さわこ、僕は小さいころ一年生をやり直したことは自分の人生にとってすごく有益なことだったと思ってるんだ。あの余分な一年がなかったら、僕はきっとものすごい勉強嫌いになっていたと思う。だからあの頃では珍しいその決断をしてくれた両親にはすごく感謝してるんだよ。そして今のジェーンを見ていて、2年生をやり直す決断をして本当によかったと思ってるよ。」

「自慢みたいだけど、ジェーンは今どの教科もAなのよ。あんなに苦労してた算数は上級者向けの特別クラスを取ってるくらい。あの時1年生と2年生の基礎をしっかりやり直させてよかったなと今では思うの。」

「ジェーンのケースを知っているから、弟のジュリアンまで“2年生をもう一度やらせて欲しい”と僕たちに懇願してくるよ。さわこも知っていると思うけど、ジュリアンにはADHDがあるんだ。だから彼もかなり勉強が遅れてるんだよ。このままだと3年生の勉強についていけないと自分で分かってるみたい。でも先生たちは3年生に上がっても大丈夫って言うから、一応3年生に上がらせるんだけどね。」

「そうだったんだ。」

「とにかく子供って大人が思うよりずっと柔軟性があるんだよ。小学校の一年生なんてまだ幼いから学校のシステム自体も理解していない子が多いと思うし。ジェーンは2年生だったから多少恥ずかしいという気持ちはあったかもしれないけど、彼女も今振り返るとやっぱりやり直してよかったと言ってるよ。」

「そう。」

「とにかく二人でよく相談して決めたらいいと思うよ。子どもにとって何が一番いいのかは、その子によって違ってくると思うし。」

「うん、ノッコもジェーンのようにうまくいくといいんだけどね。」

「ノッコちゃんなら大丈夫だと思うよ。」

「うん、ありがとう。」

                ◇

二人が帰った後、私とジョンはノッコにもう一度一年生をやり直させることを、戸惑うことなく決めたのだった。



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2年生をもう一度やり直した女の子

* これは昨日の記事の続きで、半年前のお話です。


精神科医の先生がノッコの学習障害の検査してくださっている間に私たちは、2年生をもう一度やり直した娘さんがいる友人にもその時の様子を聞いてみることにした。

この話はノッコにもその娘さんにも聞かれたくない話だったので、子供達が学校に行っている昼間にそのカップルをランチに招待した。

旦那さんの名前はトッドで、奥さんの名前はアン。

二人とも気さくないい人たちで、特に旦那さんは漫才師のようにおもしろい人だった。

二人には娘さんと息子さんがいて、娘さんのジェーンは11歳、弟くんは8歳だった。

ランチを食べながら二人にノッコの状況を詳しく話し、「ジェーンが2年生をもう一度やり直した時どんな感じだった? 私たちと同じように二人もかなり悩んだ?」と訊いてみた。

「そりゃ悩んだよ。2年生をやり直させることに抵抗は全然なかったけど、ジェーンがそれをどう受け止めるかがやっぱり心配だったんだ。」

「うちもそこなんだよね、心配してるのは。」

「だけど、一言で言ってしまえば“全く問題なかった”だよ。僕たちの心配していたもろもろの事は全て取り越し苦労だった。」

「そうだったの?」

「そうだよ。ジェーンも全く気にしてなかったし、周りのみんなも全く気にしてなかった。」

「2年生をもう一度やらせると決めた時、ジェーンにはどんな風に話してあげたの? 彼女は3年生に上がるのを楽しみにしてたんじゃなかったの?」

「すごく楽しみにしてたよ。そして自分もみんなと一緒に3年生に上がるものだと信じ込んでいたと思う。だから僕たちが気をつけていたのは、ジェーンにこの話をする時は、2年生を繰り返すことがそんなに特別なことではないという点を強調したことだよ。そして突然全てを話してしまうのではなく、一ヶ月ぐらいかけてゆっくり話していったのがよかったと思う。」

「具体的にどうやって話していったの?」

「まずね」 今度はアンが話し始めた。

「うちでは一年生の頃から、子どもが学校から通信簿をもらってくるとそれを見ながら子供達と話すようにしてるのよ。この教科はがんばったねとか、この教科はもう少しがんばらないといけないねとか。それによって子どもが自分の成績の見方が分かってくるの。だからジェーンも2年生になって自分の成績が悪くなってきたことは漠然と分かっていたと思うの。自分はちゃんと勉強ができてると思ってる子どもにいきなり留年の話をしたりするとショックを受けるから、こういう客観的な認識を持たせることは大切よ。」

「そうそう。そのあとジェーンに、3年生に上がるための準備ができてる子は上がるけど、まだ準備ができてない子は上がらないっていう話をしたんだ。そしてジェーンはまだ準備ができていないみたいだから、恐らく3年生に上がらないだろうって。でもここで大切なのは、同じ学年を2回繰り返すことに対して、その子どもがネガティブな気持ちを抱かないようにすることだよ。だから僕は、2年生をもう一度やり直すことで彼女にとってどれくらいメリットが生まれるかという点を強調して、例をあげながら分かりやすく説明してあげたんだ。そしてこのまま3年生に上がったら、彼女がどれくらい苦労するかということも。そうしたらジェーンは“いいよ”ってあっけないくらい素直に受け止めてくれたよ。」

「そうだったの」

「それと、同じ学年を繰り返すことはそんなに珍しいことじゃないということを伝えるのも大切だよ。うちの場合、実は僕自身も一年生を2回繰り返してるんだよ。ご存知のように僕にはディスレクシアがあるから、一年生の頃は読み書きにとても苦労したんだ。だから“パパも留年したんだ”っていう話をしたら、それを身近に感じてくれたみたいですごくホッとしてたよ。」

その時、私も自分自身が留年をしたことを思い出した。

「ずっと忘れてたんだけど、実は私も幼稚園の年長を2回やったのよ。私は四月生まれで背も高かったから、年中の時に年長のクラスに飛び級させられたの。そして年長が終わってみんなが一年生に進級した時、自分は幼稚園に残って年中から上がって来たお友達ともう一年過ごしたの。“ママも留年した”って話したらノッコは安心するかしら。」

「そういう例は多ければ多いほどいいと思うよ。とくに自分のママも同じ学年を繰り返したと知ったら、きっとノッコちゃんもそのことを身近に感じられるようになると思う。」

「そうだね。」


*ちょっと長くなるのでここで一旦切ります。
次は、周りのお友達の反応について彼らが話してくれた内容についてです。



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娘を客観的に見てみる

*これは前回の記事の続きで、半年前のお話です。


精神科医の先生とのミーティングの次の日、検査のために私たちが記入しなければいけない用紙にジョンと二人で記入し始めた。

そこには精神科医の先生からの質問が10ぐらい書いてあって、私たちはその質問に答えながらノッコについて語っていくという形式だった。

ノッコのバックグラウンドについて書く欄には、ノッコが養子で生後3日目に我が家の娘になったこと。産みのお母さんとずっと交流を続けてきたが、昨年亡くなってしまったこと。産みのお母さんはノッコを妊娠中ドラックを吸っていたこと。産みのお母さんには学習障害やbipolar、うつ病などのメンタルな病気があったことなどを詳しく書いた。

そしてノッコが赤ちゃんの頃から母親の私は家で日本語で話していること。ノッコは毎週土曜日には日本語の補習校に通っていることも書いた。

家での勉強の様子を書く欄では、毎日1ページの算数の宿題をこなすのに1時間ぐらいかかってしまうこと。それに加え簡単な音読をさせていることと、寝る前は英語と日本語の本の読み聞かせをしていることを書いた。

「次はノッコの好きなことと、嫌いなことだね。」

とジョン言った。

「ノッコが好きなことはまず身体を動かすことだね。自転車に乗ったり、器械体操をしたり、水泳をしたり。」と私が答えると、ジョンは

「そうだね。それにビデオを見たりゲームをしたりするのも好きだね。」と続けた。

「そうだね。でも身体を動かす方が好きじゃない? ロッククライミングとか。」

こういう用紙に記入する時って、ついつい親はいい親のふりをしたくなるもので、故に私はノッコの一番好きなことが「ビデオを見ること」や「コンピューターゲームをすること」と書くことにすごく抵抗があった。

でもジョンは、検査のためなんだから全て正直に書いた方がいいと主張した。

だから「家族の時間をどう過ごしているか?」という質問にも、私は「ハイキング」とか「図書館に行く」などと書きたかったのだけれど(実際やっているし)、ジョンは「買い物が多い」と書いてしまった(実際に多い、、、)。

「じゃあ、ノッコの嫌いなことは?」

「算数だね。」

「そうだね。それに日本語の勉強も嫌いかな。」

「そうだね。勉強は全般的に好きじゃないみたいだね。でも読み聞かせやオーディオブックは好きだけどね。」

「じゃあ、“どんな勉強法がノッコに合っていると思うか”という質問にはどう答える?」

「ノッコは抽象的なコンセプトを理解するのがすごく苦手だから、なんでもビジュアルにしてあげる必要があるよね。数字でも感情の表現でもとにかく目に見えないと彼女にはよく分からないみたいから。」

「そうそう、それに身体を使って勉強するのも合ってたね。ジャンプしながら単語を覚えたり、ゲームをしながらひらがなを覚えたり。」

「次の質問は、ノッコの長所と短所だよ。」

「ノッコの長所はやっぱり明るいところかな。」

ジョンが戸惑いなく言った。

「そうだね、それにとてもやさしい子だと思うよ。この間も風太がクッキーを落として泣いてたら自分のを半分あげてたし。」

「うん、それと取りあえず何にでも挑戦するところもいいよね。食べ物もどんなに見てくれの悪いものでもとにかく一口は食べるし。」

「それにやっぱりなんだかんだ言ってがんばり屋だよね。勉強でもスポーツでもやりたくないと癇癪を起こして泣きわめくけど、結局最後にはやり遂げるもんね。途中で放り出したのなんて一度もないんじゃないかな。」

「そうだね。」

こうやって考えるとノッコっていいところがたくさんあるんだなと改めて思った。

「じゃあ、短所は?」

「やっぱり集中力に欠けるところかな」

「そうだね。それはこの“何がノッコの学習の妨げになっていると思うか”という質問の答えにもなるね。」

「それと感情のコントロールが上手にできない点もだね。」

「そうだね。もうすぐ7歳なんだから、癇癪とかもう少し落ち着いてもいいよね。」

「最後は“ノッコの学習面でどんなことを期待するか”っていう質問だよ。」

「やっぱり本は好きになって欲しいね。本を読むことの楽しさを知って欲しいなぁ。」

本中毒者であるジョンの願いそうなことだった。

「私がノッコを見てて思うのは、彼女には何事に対しても好奇心が足りないと思うんだよね。字を習ったら道路の標識を読んでみるとか、このボタンを押したらどうなるのかなとか、自分の身の回りにあることに興味を持つことがあまりないよね。文字や数字の勉強はもちろん大切だけど、おもしろい人間になるためには、好奇心てすごく大切な要素だと思うんだよね。」

「確かにそうだね。」

「私たちはどうしたらノッコにそういう好奇心を持たせることができるんだろうね。」

「やっぱりたくさん本を読んであげることと、色んなものに触れさせ、経験させてあげることじゃないかな。」

「そうだね。」

「そういう意味では僕たちはけっこう色々やっていると思うよ。自然に触れさせたり日本に連れて行ったり。だからこれからも今までのような感じでいけばいいんじゃないかな。」

「うん。」

こうして私たちは用紙への記入を終えた。

私は今回この検査のために、こうやってノッコという子どもについてジョンとしっかり話し合えたことはとても有意義なことだったなと思った。

ノッコと風太の養子縁組をした時も、私とジョンの夫婦としてのありかたを改めて確認できる質疑応答があって、その時もそういう機会が持てたことをありがたく思った。

今回もこの検査のおかげで、思いがけずノッコという娘を改めて見つめなおせたこと、彼女のいいところや短所を客観的にみれたこと、子供達の教育に対する価値観がジョンと似ていることが確認できてよかったなと思った。


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精神科医の先生とのミーティング

更新が少し遅れました。すみません。


では、前回の記事の続きです。

                               ◇

ノッコに学習障害があるのかどうかを調べてもらうために、友人に何人かの専門医を紹介してもらい電話してみたけれど、私たちが入っている保険のネットワーク外の精神科医が多く、費用の関係でお願いできないケースばかりだった。

けれどある日、ディスレクシアのサポートをしているセンターに電話をしてみたところ、「ノッコちゃんが通っている学校が公立なら、その学校の専属の精神科医がいるはずよ。無料で検査をしてもらえるからまずは学校に連絡してみた方がいいわよ。」と教えてくれた。

私は病気のカーター先生にあまり迷惑をかけたくなく、自分たちで専門医を探そうとしていたのだけれど、学校にそんな専門医がいるならぜひ連絡してみようと思った。

そこでまずカーター先生に、ノッコに障害があるかどうか調べたいこと、そしてその検査ができる学校専属の精神科医を紹介して欲しいことをメールでお願いした。

入院準備で忙しいだろうに、カーター先生はすぐに返事をくれ、学校専属の精神科医に連絡を取ってくれた。

そこからはその精神科医と私たちで直接メールのやりとりをして、ミーティングの日程を決めた。


次の週ジョンと一緒にそのミーティングに行ってみると、そこには精神科医の先生、カーター先生、ノッコの補習クラスの先生、そして校長先生までが来ていた。

そしてそれぞれの先生がノッコの学校での様子を私たちに話してくれた。

そのあとは私たちがノッコの家での様子を話し、どうして学習障害があると思うのかなどを説明した。

ノッコは物事のパターンを見つけることが極端に苦手で、そのため算数などでも10+1=11 10+2=12 10+3=13などと教えていき、「じゃあ、10+4=は?」と聞いても全く答えられなかった。

同じように本の音読でも、

This is my hat. I like my hat.
This is my bag. I like my bag.

というような繰り返しの文章が出てきても、「あっ、繰り返してる」」と気づくことができず、毎回 “like”のところでつっかえたりするのだった。

そして何度直させても”know” を “work“と読んだり、ひらがなの「た」を「て」と読んでしまうのも不思議だった。

それにある日ノッコが音読をしているときに「文字が見えない」と言い出したことがあったので、それでディスレクシアの検査もさせたいと思ったのだった。

ノッコの補習クラスを担当してくれている先生は、きっとノッコは日本語も勉強しているから英語の読み書きが遅れているのではないかと言ってくれたけれど、ノッコの友達のみかちゃんを見ていると、ノッコと同じ月の誕生日で同じようにバイリンガルなのに、彼女は日本語学校でも現地校でもクラスのトップの方なので、ノッコの勉強が遅れているのは日本語の影響だけではないような気がしていた。

でも、もしかしたら日本語の勉強がノッコに負担を与え過ぎているのかなとも思った。

そこで私が、

「いっそのこと日本語を教えるのはやめて、英語での勉強に集中させた方がいいのでしょうか?」と訊いてみると、

精神科医の先生は、「検査をしてみてから考えましょう」と言ってくれた。

そしてそのあと彼は色々な資料を私たちに見せながらその検査の過程を説明してくれたのだけど、それがきちっとマニュアル化され、あまりにフォーマルなのにちょっと驚いた。

その資料の中には、私たちが答えなければいけない質問もたくさんあったので、それはうちに持って帰って書くことにした。

精神科医の先生の話では、検査とそのレポート作成に一ヶ月以上かかるので、結果が分かるのは学期が終わったころになるだろうということだった。

カーター先生は、ノッコを2年生に上げるか1年生をやり直させるかは、その結果が出てから決めても遅くないと言ってくれたので、私たちはとにかくその検査の結果が出るのを待つことにした。

つづく


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難しい選択(進級編)

*これは前回の記事のつづきで、半年前のお話です。


先生との面談があった日の夜、私とジョンは先生からの提案について夜中まで話し合った。

と言っても、私たちにとってカーター先生の提案は、全く意表をついたものという訳ではなかった。

というのは、私もジョンもノッコの留年?(この日本語しか出てこなかった)については何度か考えてみたことがあったからだった。

一年生もあと数ヶ月で終わりだというのに、幼稚園生用の本をつっかえながらようやく読んでいるノッコを見たり、算数の1+1=でさえも、例の点を使うやり方でしか答えが出せない様子を見ているうちに(ノッコは本当にこのまま2年生に進んで大丈夫だろうか)とよく考えていたものだった。

実はアメリカでは、プレスクールやキンダーガーテンでの飛び級や繰り下げは、そんなに珍しいことではなかったりする。

アメリカの学校は9月から新学期が始まるので、7、8月生まれの子どもを持つ親御さんたちは、そのまま一年生に進学させると9月生まれの子ども達より1年近く発達が遅れることになってしまうため、わざと1年遅らせて入学させたりする。

特に男の子の場合は、精神年齢が女の子より低い子が多いし、身体が他の子より小さいとスポーツや競技などで不利になるので、別に発達上の問題がないのにわざと進学を1年遅らせる親御さん達も
いたりする。

だからノッコのクラスにも、年齢的にはノッコと2歳近く離れている男の子が2人くらいいた。

なので私たちは、ノッコが「7歳なのにまだ一年生」という年齢的なことは特に気にしていなかった。

それにカーター先生がおっしゃっていたように、このまま無理に2年生に進級させても他の子より勉強が益々遅れていくのは目に見えていたし、それによって学校まで嫌いになってしまうのはできるだけ避けたいなと考えていた。

だったら一年生の基礎をもう一度しっかりと勉強させてもっと自信を持たせ、勉強の楽しさを知ってもらってから2年生に上げる方がよっぽど本人のためにもなるような気がした。

それに正直言って、私やジョンにとってもノッコの勉強の遅れは常にストレスの原因だった。
だからこれ以上ノッコをプッシュし続けることに自分たち自身の限界を感じていたというのもあった。

なので私たちは、「一年生をもう一度やり直した方がいい」という先生の意見にどちらかというと賛成だった。

けれどやはり一番気になることはノッコの気持ちだった。

どんなに飛び級や繰り下げが珍しくないと言っても、一年生をもう一度繰り返す子供はやはり多いわけではなく、一年生全部の中でノッコを含め五人しかいないそうだ。

なので私たちはその「少数派」に対する偏見や差別が非常に心配だった。

ノッコが一年生をもう一度にやることに対してどんな風に感じるのか。
周りのお友達はどんな風に受け止めるのか。
今あるお友達との関係はどうなってしまうのか。
ノッコは「落第者」として、更に自信を失ってしまわないか。
一年生をやり直しても、2年生にあがったらまた遅れてしまうのではないか。

などなど、考えなければいけない心配事は山ほどあった。

そこで私たちは二つのことをしてみることに決めた。

一つは、ノッコの勉強の遅れが学習障害によるものなのかを専門家に診てもらうこと。

以前からそんな疑いを抱いていたものの、学習障害専門の人にしっかりと検査してもらったことはなかったので、この機会に診てもらうことにした。そしてその結果を踏まえて、その専門家とノッコの進級について話し合ってみようと思った。

もう一つは、やはり同じような状況のお子さんがいる友人に話を聞いてみること。
私たちが親しくしている友人の中に、娘さんが2年生をやり直した人たちがいた。その時の娘さんの反応や周りの反応について色々話を聞いてみようと思った。

そこで早速私は、この地域に住んでいる学習障害の専門家と、2年生をもう一度やり直した娘さんがいる友人に電話してみた。

つづく


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担任の先生からの提案

* これは昨日の記事の続きで、半年前のお話です。


カーター先生との面談がある水曜日の4時、私は自宅から、ジョンは職場から直接ノッコの学校に向かった。

カーター先生の病気のこと、ノッコのこと、一体先生がどんな話を私たちにしようとしているのかとても気になっていた。

「ハロー」

そう言って教室に入っていくと、

「あら、さわこ、ジョン!」

と、いつもの笑顔を浮かべながらカーター先生が出迎えてくれた。

この人はいつも太陽みたいにその場をパッと明るくしてくれる人だなと、その時改めて思った。

「カーター先生、身体の方は大丈夫なんですか?」

「ええ、ええ、ちょっと腫瘍がみつかってね。良性か悪性かを調べる手術をすることになっただけなのよ。ちょっと入院が長引くけれど5月の終業式までには戻ってくるつもりだから。」

「そうですか、、、。」

「だーいじょぶよ! こんなかわいい学生たちをおいて、この世を去るなんてまだ考えてないから。きっと戻ってくるわ。」

「きっと、、また笑顔で戻ってきてくださいね。私たち待ってますから。」

「わかってるわ。」

そう言ってカーター先生は私にやさしくハグをしてくれた。

それから私とジョンを教室の真ん中の方に案内してくれた。

「今日来てもらったのは、他でもないノッコちゃんのことなんだけれど。」

しばらく雑談をしたあと、そういって先生は話を切り出した。

「はい、、。最近ノッコは学校でどうですか?」

「すごくいい子よ。ノッコちゃんをみてると、本当に子どもらしい子どもだなといつも思うわ。うれしいことがあると絶対に隠せないのね。あふれそうな笑顔でピョンピョン跳ねたりして。お友達も多いし、勉強もとてもがんばってるわ。」

「そうですか。よかったぁ。」

私は胸をなでおろした。

「ただそれでもね、ノッコちゃんの勉強はやはりちょっと遅れているのよ。」

「はい。」

「それでね、このまま残って一年生をもう一度やり直させた方がいいんじゃないかと思って、それをさわこ達に相談したかったの。」

「一年生を? もう一度?」

「ええ。ノッコちゃんは今、そのボーダーラインにいるという感じなの。だから私もなかなか決められなくて。彼女のこの一年間の伸びを考えると、このまま2年生に送ってもやっていけるかもしれないと思う反面、算数などの理解力を考えると、もう一度一年生をやり直したほうが彼女のためになるんじゃないかとも思えるのよ。」

「はい、、。」

「無理にこのまま2年生に送って勉強嫌いになるより、もう一度一年生をやり直して他の子達より進んでいる状態にしてあげた方が、ノッコちゃんの自信にもつながるような気がするし。」

「そうですね、、。」

「でもこれは、あくまで私からの提案にすぎないから、うちに帰って二人でよく話し合ってみて。そしてどうするのか決めたら、私に知らせてちょうだい。大切な問題だから、私が退院してからお話ししたんじゃ遅すぎると思って今日わざわざここまで来てもらったの。私の入院中は代行の先生に相談してもいいわ。すばらしい先生だからきっと力になってくれると思うわ。」

「そうですか。ありがとうございます。」


そう言って私たちは席を立ち、カーター先生にもう一度ハグをしてから教室を出た。

つづく



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産みのお母さんの話を皆に言いふらすノッコ

* これは前の記事の続きで、半年前のお話です。


カーター先生からの電話を切ったあと、私はすぐにジョンに電話した。

「もしもしジョン?」

「うん、どうした?」

「今カーター先生から電話があって、なんかノッコのことで話したいことがあるから、来週の水曜日の4時に学校まで来てくれって言われたんだけど、ジョンも行ける?」

「話したいことって何?」

「私も聞いてみたんだけど、あまりはっきりとは教えてくれなかったの。なんか先生が今度長く入院することになるから、その前に話しておきたいって。」

「カーター先生入院するの? どうして?」

「それもよくわからない。なんとなく訊けない雰囲気だった。でもかなり重い病気みたい。2ヶ月近く入院するって言ってたから。あんなにいい人がそんな重い病気にかかっちゃうなんて、神様どこを見てるんだって感じだよね。」

「そうだね。」

「それで来週の水曜日の4時は大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。」

「よかった、じゃあね。」

「うん。」

                                       ◇

その日の夕方、子供達が帰ってきたあとノッコにもさりげなく学校での様子を訊いてみたけれど、ノッコは別に変わったことはないと言っていた。けれど急に思い出したように、

「でもカーター先生が病院に行くから、代りの先生が来るんだ。」と言った。

「あら、そう? どうしてカーター先生は入院するんだって?」

「おなかが痛いんだって。あーあ、カーター先生が学校に来なくなったらさびしいな。」

「そうだね。早く戻ってきてくれるといいね。」

そう言いながら私は、心の中でカーター先生はきっとガンなんだろうなと思った。

そしてあんな素晴らしい先生を失う可能性について考えてみた。

すると急にやるせない思いで胸がいっぱいになり、その病気をとても恨めしく思った。




その日から面談のある水曜日まで、私はちょっと落ち着かない感じで毎日を過ごした。

(ノッコちゃんのことで話したいことがある)

そのことが気になって仕方がなかったのだ。

でもなんとなく(養子関係のことかな?)という気もしていた。

というのは最近ちょっと思い当たることがあったからだ。

ノッコは小学校が終わった後、週に数日アフタースクールに通っているのだけれど、先日ジョンがノッコを迎えに行くとアフタースクールの先生からこんなことを言われたそうだ。

小学校からアフタースクールまでの移動中、小型バスの中でノッコがお友達に大きな声でジェシカの話をしていたらしい。ジェシカがノッコの産みのお母さんであること。ジェシカが飲んではいけない薬を飲んで刑務所に入れられていたこと。おじいちゃんのようなボーイフレンドがいたこと。ずっと前に病気で亡くなってしまったことなど、言わなくてもいいようなことまでちょっと自慢げにベラベラと話していたので、先生はどういう反応をしたらいいのか分からなかったそうだ。

ジョンにその話してくれたその若い先生は明らかに、「そんなことまで話しちゃっていいの?」という感じだったらしい。

その話を聞いた私はちょっと考えてしまった。

「じゃあ、ノッコにはあまりジェシカの話をお友達に言いふらさないように言ってみる?」

「うん、、、でも僕は、ノッコの中で“ジェシカの話はしない方がいいこと”というふうに考えて欲しくはないなと思うんだよ。」

「うん、、。」

「ジェシカのことはノッコの出生と深く関わってくることなのに、それを“人に隠すべきこと”みたいに感じちゃうと、自分の出生のことまで“恥ずかしいこと”と捉えちゃう危険性があるよね。」

「うん、ジョンの言いたいこと分かるけど。」

「ノッコ自身がお友達に話したいと思って話してるんだから、その“話したい”という気持ちを大切にしてあげた方がいいんじゃない?」

「うん、確かにそうなんだけど、でもノッコの話を聞いたお友達は必ずうちに帰ってお父さんやお母さんにそのことを話すよ。そんな不特定多数の人に別に知らせなくてもいいようなことをベラベラ話さなくてもいいんじゃない?」

「うん、でもそういう話を聞いてノッコに対する態度を変えたり、僕たちに対してヨソヨソしくなるような人は別に放っておけばいいんじゃない? 僕たちとはきっと価値観が合わなかったということで。」

「うん、、まあ。」

「それにノッコもお友達が驚いてくれるから、今はうれしがって色々話してるけど、もう少し大きくなったらどんな内容なら話してもいいのか、どんな話はしない方がいいのか自分で判断できるようになると思うよ。僕はその時が来るまで、ノッコの好きなようにさせてあげるのがいいと思う。」

「そうだね。わかった。じゃあ、そういうことにしようか。」

そう言って私たちは、その時は特にノッコを注意したりはしなかった。

ノッコが急にバスの中でジェシカの話をしだしたのは、その頃家で私たちが「もうすぐジェシカの一周忌だね。」という話をしていたためだったらしく、それ以後はアフタースクールでも家でも特にジェシカの話を持ち出すことはなくなった。

なので、私はそんな出来事があったことすらすっかり忘れていた。

でもカーター先生が「ノッコちゃんのことでちょっと話がしたい」と言った時、もしかしたらノッコは彼女のクラスでもジェシカのことをお友達にベラベラ話しているのかもしれないなと思った。

それで先生も気になって私たちの耳に入れておこうと思ったのかも。

(それとも養子とは全然関係ないことなのかな、、、)

そんな風に一人でああだこうだと考えているうちに、約束の水曜日がやってきた。


つづく


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さわこ

Author:さわこ
在米のさわこです。売春、ドラッグ、破談などの障害を越えてようやく家へきたノッコと風太の養子縁組のお話を綴っていきます。

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