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学校が怖いの



* これは昨日の記事の続きで、半年前の出来事です。


緊張のキンダーガーデン第一日目を無事に終えたノッコ。
このまま順調に新しい環境に馴染んでいくのだと思っていたジョンと私だったのだけれど、、、、


学校が始まってから3日目、私とジョンがリビングで話をしていると、夜の11時頃にノッコの部屋から突然「きゃー!」という悲鳴が聞こえた。

何事かと思いジョンと慌ててノッコと風太の部屋に走って行った。

私達が階段を上っている間も「No !!!!!!!」というノッコの叫び声が聞こえて、心臓がバクバクしだした。

そして部屋のドアを開けると、ベッドで寝ているはずのノッコの姿がなかった。

暗い部屋の中を目を凝らしながら見てみると、ノッコが壁と本棚の小さな隙間に入ってしゃがみこんでいるのが見えた。

「どうした、ノッコ?」

急いでノッコを抱きしめると、ノッコはガタガタと震えながら

「学校が怖いの。学校が怖いの。」と言った。

「学校が怖いの?」

私がノッコの顔を覗き込んでそう訊いても、ノッコはまだ半分寝ているような感じで、ただブルブルと震えながら一点をみつめているだけだった。

私はノッコを抱っこしたまま椅子に座り、背中をトントンしながらノッコが落ち着くのをしばらく待った。

10分ぐらいするとノッコはスースーと寝息を立て始めたので、そのままベッドに移して私達は部屋をでた。

ところが私達がベッドに入ってしばらくすると、またノッコの部屋から「キャー!」という悲鳴が聞こえた。

慌てて飛び起きて部屋に駆けつけると、ノッコは今度はベッドの上でうつ伏せになりながら「ノー!」と叫んでいた。

私が駆け寄って抱きしめると、ノッコは私にガシッと抱きついて2歳児のように「うわーん」と大泣きを始めた。

大泣きが終わると今度はしゃくりあげがいつまでも止まらず、結局ノッコがすっかり落ち着くまでに30分ぐらいかかってしまった。

私はそんなノッコになんと声をかけてあげればいいのか分からず、

「ノッコちゃん大丈夫だよ。大丈夫だからね。」

ただそんな言葉を繰り返しているだけだった。

                              ◇

そして次の朝ノッコと風太を起こしに行くと、ノッコはすでに起きていてベッドの上に座っていた。

なんとなくいつもと様子が違っていたので、

「どうしたの ノッコちゃん、何かあった?」

そう訊くと、ノッコはためらいながら

「ママ、ベッドが濡れてるの」と言った。

「えっ、どうして濡れてるの?お水こぼしちゃった?」

「ううん、おねしょしちゃったの。パジャマもびちょびちょ。」と言った。

それを聞いた私はとってもビックリしてしまった。

だって3歳でトイレトレーニングが終わってから、ノッコは今まで一度もおねしょなんてしたことがなかったから。

「そうかあ。いいよ、いいよ。じゃあ ママ、シーツとパジャマ洗うからここで脱いでね。」

私がそう言うと、ノッコはようやくもそもそとパジャマを脱ぎ始めた。

朝ご飯を食べている時に、私はノッコに「ねえ、ノッコちゃん。ノッコちゃん昨日の夜、なんか怖い夢見た?」と訊いてみた。

「ううん。」

「そう、でもノッコちゃん、夜中に“学校が怖い”って言ってたんだよ。ノッコちゃんは学校楽しくないの?」

「楽しいよ。」

「嫌な事とかないの?」

「ないよ。」

「そう、それならいいけど、、、」

そう言ってその時の会話は終わったけれど、ジョンも私もひどくノッコのことが心配になってしまった。

「ねえジョン、やっぱりブラウン先生に相談した方がいいんじゃない?ノッコがおねしょするなんて相当ストレスを溜めてるんだと思うよ。」

「うん、、、でも先生も最初の週で色んな子供の対応があるだろうから、もう少し様子をみて、ノッコの状態が改善されなかったらその時相談することにしようよ。」

「うん、、、わかった。」

そうして私達はしばらくノッコの様子をみる事にした。

次の日学校から帰って来たノッコは相変わらず穏やかだったし、「学校は楽しかった」と言っていた。

そしてその晩は夜中に夢にうなされることもおねしょをすることもなかった。

けれどその次の日の朝いつものようにノッコを起こしにいくと、ノッコはまたおねしょをしていた。

そのあと朝ごはんを食べている時にまた「学校で嫌な事はない?」と訊いてみると、ノッコは急にイライラした顔つきになり、

「昨日ね、同じクラスの女の子が私を突き飛ばしたの。」と言った。

「それはひどいね。どうしてノッコちゃんを突き飛ばしたりしたのかな?」

「分かんない。ノッコ何もしてないのに。」

「ノッコちゃん、それでどうしたの?突き飛ばされたあと。」

「ノッコ泣いたの。」

「先生に言った?」

「ううん。言わなかった。」

「そっかあ。今度そういうことがあったら、ちゃんとその子に“やめて!突き飛ばすのは悪い事だよ”って言って、それでもやめなかったら先生に言うんだよ。いい?」

「うん。」

その日子供達を学校に送っていったあと、私はジョンに電話して

「これで2回目だよ、おねしょしたの。やっぱり先生に“家でこんなことがありました”と報告するだけでもした方がいいんじゃないかと思うんだけど、、」

と訊いてみた。

「そうだね。メールはしておいた方がいいかもね。」

ジョンもそう言ってくれたので、私は早速ノッコの担当のブラウン先生にメールをしてノッコの悪夢やおねしょについて話し、彼女が繊細な子であることなどを説明した。

するとその日のうちにすぐに先生から返事が来て、

「実はノッコちゃんがクラスメートに突き飛ばされた時、私もその場にいました。その子にはちゃんとノッコちゃんに謝るように言いましたし、そのあとノッコちゃんも普通にしていたのであまり気に留めていませんでした。申し訳ありませんでした。これからはもう少し注意してみていくようにします。それからおねしょと夢にうなされる件についてですが、キンダーガーテンの最初の数週間は子供達のストレスが色々な形で表面化することはとても多いです。でもたいていのケースは子供達が新しい環境に慣れるとよくなっていくようですのでもう少し様子を見てみて、もしもノッコちゃんの悪夢やおねしょが続くようでしたらまたご連絡下さい。」

というような内容が書いてあった。

なので私もジョンと相談して、しばらくまたノッコの様子を見守ることにした。

毎日ノッコが学校から帰ってくると、「今日は誰と遊んだの?」とか「お弁当は全部食べた?」など当たり障りのない質問をしながら、ノッコの学校での様子を探ったりしていた。

すると先生のおっしゃっていた通り、学校に慣れてきた2週間目くらいから、ノッコの「学校が楽しい」という態度がだんだんはっきりと分かるようになってきた。

クラスにお友達もできてきたようで、毎日口にするクラスメートの名前が徐々に増えてきた。

そしてあれ以来おねしょをすることも、夢にうなされることも、すっかりなくなった。

以前のような笑顔が戻って来て、私はそんなノッコをみながら(もう大丈夫かな)と思うようになった。

ふー、やれやれ。

とりあえずこれで一応「解決」ということかな、と思った。

いやー、しかし今回の事でまたしてもノッコの繊細な部分を再度思い知らされたような気がした。

プレスクールにいた頃のアンソニー事件と同じように、学校であったことは私達に一切話さず、全てを自分の中に溜め込んでしまい、それが夢にうなされたり、おねしょをしたりという身体の変化で表れてしまう。

ノッコは口で色々説明するのがあまり得意じゃない分、私達が彼女のこういう身体のサインを注意深く見抜いてあげる必要があるし、毎日ノッコに話しかける事でしつかりコミュニケーションをとっていく事もとても大切なんだなと痛感した出来事だった。

同時に、日本滞在した時のノッコの発狂ぶりや、アンソニー事件があった時の癇癪のひどさを思うと、表面上は比較的穏やかだった今回は、それはそれでノッコの成長ぶりを示しているのかなという気もしたりした。

ノッコが何もできなかった赤ちゃんの頃のように、全ての弊害から私が彼女を守ってあげることはもうできない。

だからこうして環境が変わる度にノッコは自分の力でそのストレスを乗り越え、その環境に馴染んでいかなければいけないのだった。

例えお友達に突き飛ばされても、どんなに悪夢にうなされても、けして「学校に行きたくない」とは言わなかったノッコ。

彼女は確実に強くなっていた。

その強さがあれば、きっと大丈夫。

ノッコなら大丈夫。

そう信じて彼女を見守っていくことが、親として私ができる唯一のことなんだなと思った。


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おいおいおい、話の展開が!

* これは一年前のお話です。


私達が家族ぐるみで一番仲良くしている友人にドリアンとマーナがいる。彼らにも我が家と同じ5歳の女の子(エマ)と2歳の男の子(ルル)がいるので、子供達同士もお互いを「親友」と呼ぶほど仲がよく、本当に頻繁に一緒に遊んでいた。

ある日マーナ達はだいぶ遅れてエマのバースデーパーティを開いた。

そのパーティに招待された私達は、風太も連れて4人で参加した。

以前もこのブログで書いたけれど、私の友人の子供達のバースデーパーティはわりと盛大に開かれることが多かった。

エマのパーティも例外ではなく、女の子達はみんなプリンセスのドレスを着て、男の子達もいつもより正装してやってきた。

子供達は庭でドリアン達が予め隠しておいた宝探しのゲームをしてから、テントを張ってその中でおやつを食べ、それから地下にあるプレイルームでトランポリンやボールを使って楽しそうに遊んでいた。

その間親達はリビングルームでお茶を飲みながら雑談をしていた。

以前は必ずノッコか風太がまとわりついてきて、全然友人と話なんてできなかったのに(こんな風に子供達を好きなように遊ばせて、大人だけで話ができる日が来たんだなー)なんて思いながらクッキーを口に運んでいた。

その時「うわーん」と子供の泣き声が地下から聞こえてきた。

あの声の大きさからいくと、どうやら泣いているのはノッコらしかった。

案の定ノッコは顔をぐしゃぐしゃにしながら階段を上って来て、私を見つけた途端ギューっと抱きついて来た。

「どうしたの、ノッコちゃん。どこか痛いの?」

「ううん。」

「じゃあ、どうして泣いてるの?」

「リリーが,リリーが、私は遊んじゃだめだって」

リリーと言うのは別の友人の娘さんで、ノッコより一つ上だった。
エマとはよく遊んでいたようだったけれど、私達はリリー家族とそんなに交流はなかった。

「どうして遊んじゃだめだって?」

「エマはリリーと遊ぶから、私は遊んじゃだめだって」

「そうなの? それはちょっと悲しいね。」

「リリー 意地悪!」

「じゃあさ、もう一回彼女の所に行って、ノッコもエマとリリーと遊びたいって、だから三人で遊ぼうって言ってみれば?」

「、、、、、、」

「ノッコちゃんが泣いたり怒ったりしないで、ちゃんと聞けばきっと一緒に遊んでくれると思うよ。」

「、、、、、、、」

「じゃあ、ママも地下室に一緒に行こうか?」

「うん」

そうして私はノッコの手を取って地下室に行った。

その時エマとリリーは人形の家で遊んでいたので、ノッコを二人の所へ連れて行った。

そして「ほらノッコちゃん、何か言いたいことがあったんだよね。」とノッコを促すと、ノッコは小さな声で「遊ぼ」とだけ呟いた。

するとエマとリリーは「いいよ!」と言ってすぐにノッコを部屋に入れてくれた。

(なーんだ、リリーは全然意地悪なんかじゃないじゃない)

「やれやれ」と思いながら私は一階に上がって行った。

                                ◇

その日の夜ノッコに絵本の読み聞かせをした後、いつものように少し雑談をした。

普段は保育園でどんなことがあったのかあまり話してくれないノッコも、この「お話タイム」には色々と話してくれることがあった。

その夜もノッコは機嫌が良さそうだったので、色々今日のことを訊いてみようかなと思った。

「ねえ、ノッコちゃん、今日エマのバースデーパーティ楽しかった?」

「うん、ノッコ宝探しでこれ見つけたんだよ。」

ノッコが見せてくれたのは小さい恐竜だった。

ノッコはいつもその日気に入ったものがあると、それを抱いて寝る習慣があった。

「よかったねー。ノッコちゃん一番最初に見つけたもんね。」

「うん、エマもそのあと馬をみつけたよ。」

「そうだね。それにエマのケーキも綺麗だったね。」

「うん、ピンクのケーキだった! ノッコまた食べたいなぁ。」

「そうかあ、、、ノッコちゃんは、リリーとエマとも仲良く遊んでたみたいだね。何して遊んでたの?」

私がそう訊くと、ノッコは急に眉間にシワをよせて

「私、リリー好きじゃない!」と言った。

「えっ、そうなの? どうして?」

「だって意地悪なんだもん」

「本当?」

「そうだよ。エマとノッコが遊んでたら、エマと遊んじゃだめだって」

「ああ、それでノッコちゃんは泣いちゃったんだよね。」

「そうだよ、それでノッコが泣いたらリリーはドンってノッコを突き飛ばしたんだよ。」

「えっ、そうだったの?」

(本当かなー?)

「それでね、ノッコは赤でべそだって、うんちだからトイレに流しちゃえって言ったの。」

「それはひどいね」

ノッコは話しながらだんだん興奮して来たようだった。

「だからエマが ”ノッコは私の親友なんだから止めて!”って言ったんだよ」

「そう、エマはやさしいね」

「うん、それから ”ノッコと遊べないならうちに帰って” って言ったの」

(なんだか、だんだんと自分が望んだストーリーになっているような、、、)

「そう」

「そしたらリリーが泣いて、リリーのママが来たの。」

(あれ、そうだったけ?)

「そしてリリーのママが “ノッコちゃんとちゃんと遊べないならタイムアウトしなさい” って言ってリリーをタイムアウトさせたんだよ。」

(あれれ、何か話の展開が、、、実際と違うような、、)

「でもリリーはタイムアウトしなかったの。だからリリーのママがリリーをお家に連れて行っちゃったんだよ」

(いやいや、連れて帰ってないって!)

「ノッコちゃん、リリーはお家に帰されてないと思うよ。ずっとノッコとエマと遊んでたんじゃない。」

「ううん、家に帰されちゃったんだってば!」

ノッコはもう完全に自分のストーリの中に入ってしまっているようで、ムキになってそう叫んだ。

なので私も敢えて強くは否定しなかった。

「そうなんだ、、、」

「それでそのあとリリーはどうしたの?」

「トイレに流されちゃった。」

「!!!!!?」


その時初めて、何か事件が起こった時どうして警察は幼児からの事情聴取をあまり信用しないのかがよく分かった。 



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産みのお母さんへの願い

* これは昨日の記事の続きで、一年前のお話です。


私はジェシカのことを考えているうちにどうしても彼女と話がしたくなり、思い切って電話をしてみた。

「ハロー」

「あら、さわこ、どうしたの? 」

「うーん、別に用はないんだけどね、、、今日はみんなで遊べて楽しかったね。」

「うん、そうだね。子供達はもう寝たの?」

「うん、もう寝た。、、、今日私、なんか帰るときすごく慌ただしく出て来ちゃたから悪かったかなと思って。」

「うん、もっと遊んで行けばよかったのに。ポールもノッコや風太がかわいくて仕方ないみたいよ。」

「そうだね。ポールは子供達がいるといつもよりニコニコしてるよね。」

「そう、そう、だから私がさわこ達と会う日は、子供達をあとで家に連れて来なさいって言うんだよ。」

「そうなんだ。、、、、ねえ、ジェシカ、今日ポールから聞いたんだけど、、、、ジェシカこの間薬を飲み過ぎちゃったんだって?」

「ああ、、」

ジェシカは一瞬ちょっと驚いたようだった。

「うん、お腹の痛みが酷かったからいつもより多く痛み止めを飲んだんだ。それから鬱病の薬も一緒に飲んじゃったみたい。」

「病院に運ばれたって」

「うん、倒れちゃったからね。」

「ジェシカ、大丈夫なの?」

「うん、もう大丈夫だよ。」

「私、、ジェシカが死んじゃってたりしたらどうしようって思って。」

「大丈夫だよ。あれはアクシデントだったんだから。それに今はポールが薬の管理をしていて私に決められた量しかくれないから。」

「そうなんだ。きっとジェシカのためにもその方がいいのかもね。」

「、、、、、、」

「ねえ、、ジェシカ、ノッコの前から突然消えたりしないでね。」

「、、、、、うん」

「ノッコ、今日ジェシカとシャボン玉したのがすごく楽しかったって。ジェシカが大好きだって。だから、、、、約束だよ。」

「うん、わかってる。もうしないから大丈夫だよ。」

ジェシカはその事についてはもうそれ以上話したくなさそうだったので、私達はそこで電話を切った。

本当はもっと彼女の気持ちに寄り添った、やさしい言葉をかけてあげるつもりだったのに、

私の「気付いてあげられなくてごめんね」という気持ちをもっと素直を伝えたかったのに、

なんとなくそれができなくなってしまった。

ジェシカは会話の間中ずっと自殺未遂を否定し続けていたし、一生懸命その話題から話をそらそうとしているようだったので、「死なないでね」と伝えるのが精一杯になってしまった。

ポールの話ではジェシカはあの事件以来、定期的にカウンセリングに通っていると言っていた。

そういう小さな努力の積み重ねでジェシカの精神状態がもっと安定したものになってくれたらいいなと思った。

でもそれを叶えられるのは私やポールの力だけではやはり無理で、最終的にはジェシカ自身が強くならなければならないことは私達も彼女自身もよくわかっていた。。

                                 ◇

以前読んだ事がある雑誌の記事にドラッグ中毒に関する興味深い研究が載っていた。

私達はよく、ドラッグ中毒者は彼らの身体がクスリを欲する為に止められない、または一度止めてもまた吸い始めてしまうのだと考えがちだと思う。

でもある研究チームはネズミを使った実験を通じて、必ずしもそうでないことを提案した。

この実験では小さなケージに数匹のネズミを入れ、そのネズミ達のためにドラック入りの水と、普通の水の二つを用意した。

ドラッグ入りのお水を飲んだネズミは必ずといっていいほどまたドラック入りの水を選ぶようになり、次第にドラッグ中毒になっていった。

そして今度はもっと大きないわゆる「ネズミパラダイス」というような物を造り、その中にネズミが運動できる歯車のようなものや、探索できる穴や、ネズミ用のおもちゃをたくさん用意した。

そして以前と同じようにドラッグ入りの水と、普通のお水を設置した。

実験用のネズミを数匹そのパラダイスに入れてみると、ケージの時とは違い今度はドラッグのお水を好んで飲むネズミがほとんどいなかったという。

そして更に驚いたことに、以前の小さなケージでドラッグ中毒になっていたネズミをそのパラダイスに移すと、彼らまでがドラッグ水を飲むのをやめ、普通のお水を好んで飲むようになったということだった。

これによってこの研究グループは、ネズミがケージの中でドラック水を好んだ、もしくはドラッグ水を飲むことを止められなかったのは、彼らの身体がドラッグを欲したからではなく劣悪な環境のせいだったのではないかという結論に達した。

もちろんこれはネズミによる実験であって、人間にも同じような結果が出るとは限らない。

それに人間はネズミと違って、例え物質的には恵まれた環境にいても、「生きる楽しみ」を持っていないと幸せを感じられない生き物だと思う。

けれど自分に自信を持ち、整った環境の中でその「生きる楽しみを」満喫している人には、やはりドラッグの誘惑をはねのけるだけの強さがあるような気がする。



薬物依存の生活から中々抜け出せないでいるジェシカ。

彼女はこれから人生の楽しみを見いだす事ができるのだろうか。

どうしたら自分に対する「自信」を取り戻すことができるのだろうか。

私とジョンは時々どうしたらジェシカが自立した幸せな生活を送れるようになるだろうと話す事があった。

彼女は割合手先が器用なので、私達がお金を出して美容師の学校に通わせてあげようかと考えたりしたこともあった。

でも人とうまくつき合えないあの性格では、やはり接客業は無理かなと思い直してみたり。

そして話し合いの最後にはいつも、

「結局これはジェシカ本人の問題なんだ」という結論に達するのだった。

横から私達がちょこちょこ手を差し伸べた所で、それが彼女を真から変えることはできない。

そして私達にはそれ以上をしてあげられるキャパシティーもない。

だから、

こんなに壊れてしまった彼女の心を直せるのはやはりジェシカ自身しかいないんだと思う。

カウンセリングを通じて少しずつ心の紐を解いていって欲しい。

子供の頃に起こったことは、何一つ彼女のせいではなかったのだと気付いて欲しい。

そしてゆっくりと本来の自分を見つけ出し、自分への「自信」を取り戻して欲しい。

今日博物館のカフェテリアでジェシカは「外食するのがうれしい」と言って、本当に幸せそうな顔をしていた。

これからも彼女の人生があの笑顔で一杯になったらいいのにと思う。

きっとそこまでの道のりはとっても長いだろうけど、

でもジェシカ

がんばれ!




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ドラッグ中毒と自殺


* これは昨日の記事の続きで、一年前のお話です。


「あーあ、また雨が降り出して来たー。」

そう言って笑いながらジェシカとノッコが家の中に入って来た声が聞こえたので、私は慌ててリビングルームに戻った。

ポールも薬の入っている引き出しにまた鍵をしてからリビングに戻って来た。

「シャボン玉楽しかった?」

「うん、ママ、ジェシカはすごく大きいのが作れるんだよ。」

ノッコは目をキラキラさせながら嬉しそうにそう答えた。

「じゃあ、ジェシカ、私達そろそろ行くわ。」

私はどうしてもジェシカの目を真っすぐに見る事ができず、下を向いたままそう言った。

「えっ、もう帰るの?」

「うん、ちょっとこれからやらなくちゃいけないこともあるし。今日は本当にありがとね。」

そう言ってジェシカにハグをしてから風太をソファーから抱き上げ、ノッコの手を引っ張りながら逃げるようにジェシカの家を後にした。

                                ◇

「ジェシカが自ら自分の命を絶とうとした」

私はその事を車の中でも、家に帰ってからもずっと考えていた。

ジェシカは本当は死ぬ気などサラサラなく、ただポールにかまってもらいたくてそんな事をしたのかもしれない。

いつも誰かの愛情に飢えているジェシカならあり得ないことじゃない。

でももしもそうだとしたら、どうして彼女は私達にだまっていたんだろう。

今回ノッコの誕生日を一緒に過ごす為にジェシカとは何回も電話で話をしていたのに、彼女はその件について私には一言も話さなかった。

もしも人の注意が引きたくて自殺未遂を起こしたのなら、あのジェシカのことだから「この間ねー」などと私達に話してきても不思議ではなかった。

ジェシカ、、、

彼女は本当に死ぬつもりだったのだろうか。

その晩私は中国にいるジョンに電話した。

今日ポールから聞いた事を彼に話すと、ジョンもとても驚いた様子だったけれど、それから静かに、

「結局ジェシカのドラッグ中毒は治ってなかったってことだよね」と言った。

「えっ?」

「ポールと住むようになって確かにジェシカのコケインとかヘロインの中毒はなくなったけど、結局はそれらのドラッグが痛み止めの薬に替わっただけだったんだよ。だから彼女の心の中にある基本的な問題は何も解決していなかったんだ。」

「うん、でもストリートの生活よりは安定していたように見えたのに。」

「確かに住む所も食べる物も安定していたのはよかったと思うよ。でも彼女はそれでもやっぱりハッピーにはなれなかったんじゃないかな。」

「そうだね。」

5年前にジェシカと初めて会った頃から、私とジョンはよくドラッグ中毒者に関する雑誌の記事を読んだり、そのトピックを扱ったテレビ番組をみるようになった。

私は小さい頃から両親や周りの人に、アル中や麻薬中毒者などは「その人が弱い」から陥ってしまう問題なのだと教えられてきた。

今でもその理論が正しいと思える部分も確かにあるけれど、色々な中毒者について知れば知る程、中毒者本人の意思が弱いというだけの理由では片付けられない、複雑な環境の問題が絡んでいるということに気付いた。

私達は「ドラッグ中毒」と聞くと、ついついスラム街のホームレスっぽい若者たちを想像したり、逆にお金はあるけれどストレスフルな映画スター達を頭に浮かべたりしてしまうけれど、アメリカでは普通の家庭でも普通にドラッグ中毒やアル中の人がいる。

普通にアニメやゲームが好きな大学生や、中流家庭に育ったモデル並みにかわいい子、シングルマザーとしてがんばっている人など。

番組の中で次々に紹介されるこれらのドラックやアルコール中毒の人達を見ていて、彼らの中に共通する点が一つあることに気付いた。

それは、

「自分に自信がない」ということ。

そしてその自尊心の低さは、往々にして幼少の頃に受けた「親の過大な期待」が原因であるようだった。

小さい頃は成績優秀の人気者だったり、学校でバスケットボールのスターだったりしたのに、それでも彼らの親達は満足することができず「もっと、もっと」と期待し続けた。

そんな期待に応えきれないと感じた時、だんだんとその子供達の心が壊れていく様子が番組を見ていてよく分かった。

この番組に出ていた、現在は成人しているそれらの子供達が必ず口にしていたフレーズに「I was never good enough」というのがあった。

どんなに頑張っても頑張っても、親に「がんばったね」と認めてもらえない。代わりに聞かされるのはいつも小さなミスへの批判。

そうして次第に「自分は親を喜ばす事のできないダメな人間なんだ」と思い始めてしまう。

もちろんドラッグ中毒者の中には、小さい頃虐待を受けたり、中学や高校でレイプをされるなど「ある事件」が原因で薬に溺れていく人もいた。

けれどどんなケースの中毒でもやはり根本的には自尊心の低さが原因になっている場合がほとんどだった。

そしてこれらの番組を見ていてもう一つ分かったことは、

「ドラッグをやる人はそうしないと自殺してしまうから止められないのだ」ということだった。

ドラッグ中毒者の中には、例えいい仕事に就いていても、いい家族に恵まれていても、「自分には生きる価値がない」と感じている人が多く、「明日死んでしまってもいい」とさえ思っているような感じだった。

ドラッグはそれらの暗い感情から一時だけでも解放してくれる魔法の薬だった。

「自分は世界のトップに立っているような気になって、心配する事なんて何一つなかった。まさにパラダイスだった。」

そうインタビューに答えている人達が、本当にたくさんいた。

私はジェシカの自殺未遂のニュースを聞いて、あの番組でみた中毒者たちと彼女の姿を重ねていた。

そして、

彼女の人生は一体なんなんだろうと考えた。

総合失調症の母の下に生まれ、小さい頃から虐待を受け続け、養子にもらわれた家族にもいじめられ、十代になって移された施設では性的虐待を受け続けた。

そんな環境の中で育った彼女に社会は一体どんな期待をしているのだろう。

ドラッグに走っても不思議ではない。

自殺を考えても何の不思議はない。

むしろ生きている事の方が苦しいのではないかと思う程彼女の人生はつらいことの連続だった。

だからこそ、

だからこそ私は彼女の明るさに驚き、その真っさらな心に感動したのだった。

いつも邪魔者扱いされて誰からも本当の意味で愛されたことのなかった彼女が、どうしてこんなにノッコを愛せるのかが不思議で仕方なかった。

そして風太を気遣い、風太までノッコと同じ様に愛そうとしている彼女に涙が出るほど感謝していた。

私は、

そんな彼女の強さを心から尊敬していた。

でも、

やっぱり、

彼女の強さには限界があったんだ。

ポールとの生活は彼女に本当の意味の「幸せ」を与えてはくれなかった。

だから彼女の奥底にある「自信のなさ」という問題は、実は少しも解決していなかったんだ。

ヘロイン中毒から痛み止め薬中毒に替えただけの毎日。

それはジェシカが自殺しないで過ごしていくための唯一の方法だったんだ。

でもそんなドラッグが与える一時期の快楽も、ジェシカの生活を支えていくことはできなくなってしまった。

「ああ、ジェシカ、、、」

「ごめんね。」

「私、、ごめんね」

私は無償にジェシカに謝りたい気持ちで一杯になってしまった。

それは、

本当は心のどこかでジェシカの基本的な問題は解決していないことを知っていながら、

それに気付かない振りをしてきたから。

思わせぶりな優しさだけを振りまいて、そのくせ彼女にべったり頼られそうになるとすぐに逃げてしまっていたから。

だから、

どうしても一言誤りたい気持ちで一杯だった。

私は思わず受話器を取り、彼女の番号をダイアルした。

つづく


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産みのお母さんの自殺未遂

* これは一年前のお話です。


今年もノッコの誕生日が近づいてきたので、いつものようにジェシカに電話をして会う約束をした。

去年同様ジョンが中国出張で不在だったので、私とジェシカと子供達の4人で出かけることになった。

もともとジェシカは動物園に行きたがっていたのだけれど、会う約束をしたその日はあいにく雨だったので、急遽子供のための博物館に行く事にした。

そこは博物館といっても展示物をみて歩くところではなく、ボールを投げ入れて遊ぶ遊具や、水遊びの場所、子供達が走り回れる場所など、ノッコや風太が喜びそうなものがたくさんあるプレイグラウンドのような所だった。

ジェシカはまず2歳になってたくさんしゃべるようになった風太にビックリしていた。特に「We go museum 」とか「 We play playground 」など “museum” という言葉まで知っていたことにとても驚いていた。

なんでもノッコと同じ事をやりたがる風太は、彼女に負けないように一生懸命速く走ろうとしたり、遠くへボールを投げようとしてがんばっていた。

その姿がおかしくて、ジェシカと二人で何度もお腹をかかえて笑い合った。

ただジェシカは以前よりも疲れやすくなったのか、子供達と少し遊ぶとすぐにベンチに座って休んでいた。

ジェシカと初めて会った頃彼女はまだ26歳で「若いなぁ」と思っていたけれど、今はもう30歳を過ぎて、しかもあの頃より1.5倍は太ってしまったので体力もかなり落ちてしまったようだった。

ジェシカがゼーゼーいいながらベンチに座る度に、(もっとちゃんとした食生活を送って、もっと運動もすれば、彼女の健康状態もかなりよくなるだろうに)と思ったりした。

たっぷり遊んだ子供達が「お腹すいた」というので、そろそろランチを食べる事にした。

その博物館には小さなカフェテリアがあったのだけれど、そこの食べ物は本当に最悪なのを知っていたので、私は予め子供達とジェシカの分のサンドイッチを作って来ていた。

けれどジェシカは、「私あまり外食することってないから、できればカフェテリアで食べ物を買いたいんだけど」と言うので、「いいよ」と言ってジェシカの好きな物を買ってあげた。

「外で食べる」というのが本当にうれしいようで、ジェシカはオーダーしたピザとペプシを幸せそうに口にしていた。

ランチの後ジェシカはもっと遊びたそうだったけれど、そろそろ風太のお昼寝の時間だったので私達はそのままジェシカのお家に行く事にした。

ジェシカはノッコへの誕生日プレゼントを用意してあるので、それをそこで渡したいと言っていた。

ジェシカの家に着くと、彼女は買っておいたシャボン玉をノッコと一緒にやりたいと言い出した。

確かに雨はもう止んでいたけれど、代わりに風が出て来て半袖ではちょっと肌寒いくらいだったので私は気が進まなかったのだけれど、ノッコも「やりたい!」と騒ぐので二人で庭でやらせることにした。

車の中で風太が寝てしまったので、私は風太を抱っこしてジェシカの家の中に入った。

家に入るとポールがソファーに座っていて、私を見ると「ハーイ」と言った。

風太を眠らせるためにソファーにスペースを作ってくれたので、私はそこに風太を寝かせた。

ポールが「博物館はどうだった」と訊いてきたので、「楽しかったよ」と答えた後、二人で他愛ない会話をした。

すると突然ポールが立ち上がってドアの方へ行き、ジェシカがまだ遊んでいるのを確認してから、指で私に「こっちへ来て」という合図をした。

私はポールがどうして私を奥の部屋へ連れて行こうとしているのかが分からなくて、一瞬戸惑った。

ポールへの印象は以前に比べるとずっとよくなったけれど、それでも彼については分からないことがまだ多く100%信用している訳ではなかった。

それでもポールが「見せたいものがある」と言ってもう一度私を奥の部屋に誘ったので、私は付いて行く事にした。

彼の家には3つベッドルームがあって、その奥の方がポールとジェシカの寝室になっていた。

彼らの寝室に入るとポールはチェストの一番上の引き出しに鍵を差し込んでそれを開けた。

そして「これを見てみろ」という仕草をしたので、私もそばに寄って見てみた。

するとその引き出しには、ドクターから処方された薬が10個以上も入っていた。

「これはなあに?」

「これは全てジェシカの薬だよ。ほとんどが強い痛み止めなんだ。」

「ジェシカはこんなにたくさんの薬を毎日飲んでるの?」

「そうだよ。お腹が痛いとか、脚が痛いとか、いつも身体のどこかを痛がっているからね。私がいつも決められた量を彼女に渡しているんだ。」

「そう。 でもどうして鍵なんてかけてるの?」

「ジェシカが勝手にたくさん飲んでしまうからだよ。」

そう言ってから彼はしばらくだまってしまった。

そうして思い切ったように、

「実はこの間、ジェシカはバスルームにあったこれらの薬を大量に飲んで自殺を図ったんだよ。」と言った。

「えっ?」

私は一瞬、自分が何を言われているのかよく分からなかった。

「自殺って?」

「うん、意識が朦朧として病院に運ばれたんだよ。本人はアクシデントだって言ってたけれど、間違いであんなにたくさんの量を飲んだりしないよ。あれは絶対に死ぬつもりだったんだ。」

「でもどうして?」

「ジェシカはとにかく鬱がすごいんだよ。元気な時は元気だけれど、鬱になるともう手の付けようがないんだ。」

「そうなんだ、、、」

これは私には全く意外なニュースだった。

ジェシカにbipolarの障害があることは聞いていたけれど、 私が彼女に電話する時ジェシカはいつも普通のジェシカだったし、こうして会う時は必ず元気いっぱいだったので、私は未だにジェシカが鬱の状態を見た事がなかった。

いつもノッコや風太と遊べるのがうれしくて仕方がないようだったし、例え落ち込んだりすることがあったとしてもそんなに深刻なものだとは思ってもいなかった。

なのに自殺未遂だなんて、、、

その時私はとにかく頭が混乱してしまって、何を最初に考えたらいいのか分からなかった。

彼女は以前、自分のフェイスブックにノッコと自分の写真を載せて「the reason for my life」と書いていたことがあった。

そんな風に唯一ジェシカに生きる意味を与えていたノッコの存在さえも、彼女を救うことはできなかったんだ。

その事を考えるとショックで何も言葉が出て来なかった。

その時ふと、以前このブログの中で「ノッコの産みのお母さんは明るくあっけらかんとしているから楽なんです。」というようなことを書いたのを思い出した。

明るくてあっけらかんとしている?

彼女がその明るいマスクの下に隠し持っていた暗い部分に少しも気付きもしないで。

私は何を言っていたんだろう。

ジェシカはこの5年間、本当はどれくらい苦しんできたんだろう。

そんな風に呑気に「あっけらかんとしていて楽」などと自慢げにブログに書いていた自分に急に怒りが沸き、その頬にビンタを食らわせたいような気持ちになった。

でもこの気持ちを何にどうぶつけたらいいのか、その時の私には自分でもよく分からなかった。

つづく、、、




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さわこ

Author:さわこ
在米のさわこです。売春、ドラッグ、破談などの障害を越えてようやく家へきたノッコと風太の養子縁組のお話を綴っていきます。

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